2017年2月19日日曜日

兄妹の苦難 第一話





                             プロローグ





 現在の地球上には、様々な人種の人間が生息している。いや、人間だけではない、多く

の動植物が生存している。さらにはいろいろな、人間の知り得ることのできない、そして

想像もできないような生物も存在しているかもしれない。

 まぁ、そんな生物についてはここで特に言うことはなく、今、注目してみようものとい

うのは、極ありふれた人間について、だ。

 環境問題としても深刻な国、それは現在の地球上では多々上げることができる。その中

でも特に世界各国から問題とされている小さな島国、日本。今、取り上げようとしている

国、それこそ、その小さな島国なのである。

 小さな島国、とは言っても国土面積が狭いだけのことであって、その中に住まう人々は

それぞれで、様々である。考え方、容姿、どれを取っても多種多様で、他の大きな国と比

較したところで土地の面積のことでそれを狭いというのは、いささか疑問が出てくるので

はないだろうか。

 そんな小さな島国の中で、平凡な生活を好む者、そうでない者、その考え方も分かれる。
 人口七千八百万、都道府県六十八、方言や文化の違いも多く見られるそんな島国、日本。
 北東に位置する、本州を隔てた地に、北海道という六十八ある都道府県の中でも面積の

最大に値する地がある。その北海道の中のさらに北東に、紋別という町がある。北海道と

いうのは、本州にある都会に比べて比較的穏やか地で、犯罪もすくない場所である。その

中でも紋別は特に平和な町で、そこに住む者は皆が皆、仲の良いことで専らの評判だった。                                      て ふ と

 さらにパンダウンしてみると、紋別町の手富渡、その南寄り、そこに幾つも連なる広い

住宅街がある。その中のひとつのアパートを覗いてみる。四階建てのアパート、その二階

にあるひとつの部屋。

 甲高い笑い声と、それと共に暖かみのある、誰もの心を和ませるような微笑ましい会話

が聞こえてくる。窓の外からは、二部屋見える。どちらも奥行きに部屋があるような様子

はないようなので、一世帯二部屋のようだ。

 向かって左側の部屋には、中肉中背の  というには多少身長が高そうにも思える青年

がひとりと、右側の部屋には、笑顔で、何やら料理を左側の部屋にあるテーブルに運ぼう

としている、小柄な少女がひとりいる。仲の良さそうなかれらは、どうやら恋人のようだ

  といってもおかしくはなく、そして実際にかれらを目の前にした時の町の人々の反応

というものは、大体がそういったものであろう。

 それほどふたりの男女は、本当に愛し合っている恋人のようであったのだ。

 では、そんな恋仲のようなふたりの関係が、どうしてそうでないと言えるのかというと、
それは少女の方の、青年に対する会話から知ることができる。

 アパートの一室には、そのふたりしかおらず、どうやらこの時間帯だけではなくふたり

だけの時間が多いようである。つまり、ふたり暮らしだ。


 これは、どこにでもいる平凡な、そして極ありふれたふたりの男女、平和な日常を望み、
そしていつでもそれをそのまま体感してきた青年と少女、そんなかれらに起こる、苦難の

日々を描いた物語である。

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